彼は黒一色に統一された姿で、出発の準備をしていた。刃渡り30センチは優に越すような大柄のナイフを左足の大腿に取り付ける。小振りのナイフ4本を両腕、両脚に一振りずつ装着し袖で隠す。そして最後はオートマチックの拳銃を腰のベルトに付けたホルスターに差し込む。ふと、腕時計に目をやり時間を確認する。この仕事は人気がない内に終わらさなければならない。玄関に置いてある鏡に映る自分の顔を見ながら、彼は仮面を被った。これで完璧だ。それもまた、闇夜に溶け込むような黒一色の仮面だった。
「行ってきます。」
誰も居ない一軒家に返って来るはずのない挨拶をして、彼はドアを閉めた。
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何かあったの?
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